おそらく日本で一番有名な味噌ラーメンといえば札幌のすみれではないでしょうか。

1964年（昭和39年）8月、創業者・村中明子氏が北海道札幌市の中の島にラーメン屋を開業。当時の屋号は「純連」と書いてすみれと読みました。素朴な味わいの札幌ラーメンが多い中、明子氏が作るラーメンはスパイスが効いた濃厚なスープでたちまち札幌中の評判となり、テレビや雑誌で取り上げられるようになりました。

三男の信宜氏は和食の料理人として高級ホテルやドイツの和食レストランで腕を振るったのち1989年（平成元年）、明子氏のもとで修業を積み、ラーメン職人として「すみれ」をひらきました。

1994年（平成6年）、新横浜ラーメン博物館(略してラ博）からの出店アプローチがあった際は周囲から猛反対されたそうです。ラ博の岩岡館長は「純連」に何度も断られ、80回目の訪問の際はライバルとなる横浜六角家の店主まで連れて行ったそうです。
まだＯＫが出なくても店舗の設計図を見せ、説得し続けました。
こうして通い続けること2年、ひらがなの「すみれ」としてついに出店を決意。
いざオープンすると3時間待ちの人気店となりました。

「すみれ」が関東圏での名声を不動のものしたのもこのころです。
私はちょうどラ博でアルバイトをしていたころ、隣の店が「すみれ」でした。
(そのころ「純連」と漢字の提灯がかかっていた記憶があります)
ラ博の場合、まかないはほかの店でも食べてよい、というラーメン好きにとってもたまらないルールだったので自店以外でもよく食べに行きました。

「すみれ」におじゃますると、店主がたまに卵やチャーシューをおまけしてくれ「おつかれー！」とねぎらってくれたものです。
ラ博は昭和33年の古き良き昭和の日本をモチーフにしたテーマパークですので、当時のコスプレをした警官役や駄菓子屋のおばあちゃん役、紙芝居のおじさん役がそのまま「すみれ」のテーブルに座って食べていたりします。
さながら映画「3丁目の夕日」の世界のまんま、まるで昔にタイムスリップしたかのよう。
入ってくるお客さんもびっくりし、よく記念撮影していました笑

そんな楽しかったラ博の日々ですが、2018年に「すみれ」がラ博を卒業する時は寂しくなり、ひとりの客として食べおさめに行きました。とにかくものすごい行列で、「あー、すみれはこんなに横浜の人に愛されていたんだなー」と感慨深く思ったものです。

そんな思い出のある「すみれ」のお取り寄せですが、たっぷり4食入っています。
「すみれ」の濃厚な味噌スープとすみれ専用に作られた特製のちぢれ麺が入っています。
具材はメンマ付き。チャーシュー、ネギ、卵は自分で用意しました。

まずは「すみれ」から。持ち味はなんといっても濃厚な味噌スープ。
トンコツ・魚介・野菜類を中心に煮込んだスープは、ニンニク・調味料等を加え、味噌の超濃厚な味わい。とにかくアッツアツで召し上がることをおすすめします。
いつもはたれにお湯を注いでスープを作りますが、「すみれ」の場合は味噌スープを鍋に入れてひと煮立ち。
北海道のラーメンらしく、体がポカポカあたたまります。

モッチモチのやわらかなちぢれ麺は札幌屈指の製麺所、西山製麺の特製33（すみれ）丸麺を使用。北海道産の高級小麦をメインに、あえてややクセのある外国産の小麦をブレンドした麺は濃厚なミソスープに負けないコシのある麺です。
すすり心地もよく、香りと風味豊かな一杯はまさにお店の味となりました。

「すみれ」はラ博卒業から1年後、2019年に横浜の野毛に戻ってきました。
またあの懐かしい味が身近で楽しめるなんてうれしいですね。

テールラーメン「おにやんま」は「すみれ」とちがい、透明感のある澄んだスープ。

麺は同じ西山製麺の特製33（すみれ）丸麺です。牛骨のうまみがギュッと凝縮したうまみを感じます。

テールスープ独特のふわっとしたいい香りが鼻を抜け、こってりスープとはまた違うおいしさです。

気になる方は「すみれ」と「おにやんま」の食べ比べを楽しんでくださいね。